第3部|「人的リソース・時間・予算」のリソース配分設計 — 優先順位のつけ方と、運営サイクル

C O N T E N T S


  1. この章の目的と前提
  2. 優先順位のつけ方(3ステップ)
  3. リソース配分(検証と改善のサイクル)
  4. まとめ

この章の目的と前提

この章では、人手不足のリスクが表に出る前に、“どこで止まるか”ではなく、“なぜ止まりそうなのか”——つまり、何が原因で人手不足に陥るのかを見極め、早めに手を打つための優先順位づけワークを紹介します。

「採用」「定着」「業務設計」「自動化」のどこを先に整えるか。その判断を感覚ではなく、共通の基準で整理することを目的としています。たとえば次のような場面を想定しています。


想定しているシーン

  1. 求人を出しても応募が少なく、欠員が続いている
  2. 求人を出しても応募が少なく、欠員が続いている
  3. 経験者に業務が偏り、若手が育ちにくい
  4. DXや自動化を進めたいが、どこに投資すべきか判断できない


こうした“人手不足のサイン”が出はじめたとき、経験則や勘に頼らず、**共通のものさしで判断することが重要です。第2部から読んでいただくと、よりスムーズに理解できます。


第2部では、自社のリスク(人手不足倒産につながる要因)を可視化する方法を紹介しました。この第3部では、その診断結果をもとに、どの原因から手をつけるか”を設計するステップ*を扱います。

この章のゴール

この章では、「何を優先して取り組むか」を、感覚ではなく共通の評価軸(影響度・発生頻度・回復までの時間)で判断します。

第2部で可視化した結果を起点に、採用・定着・業務設計・自動化へ「人的リソース・時間・予算」をどのようにリソース配分するかを整理し、決定した配分を計画的に運用・検証・改善していく流れ**を解説します。

優先順位のつけ方(3ステップ)

優先順位の決め方にはさまざまな方法があります。
ここでは、実際の企業でも再現できるように、次の3ステップで整理します。


優先順位整理の3ステップ


① 守るべき役割を明確にする → ② 受け入れの準備状況を確認する → ③ 三つの評価軸で絞り込む

この順番で考えると、社内で意見が食い違いにくく、判断を共通言語として共有しやすくなります。

ステップ1|「守るべき役割」を明確にする

守るべき役割=事業が止まらないために欠かせない職務や機能です。
たとえば、現場監督、ドライバー、介護夜勤スタッフ、主要工程の段取りなど。

この「守るべき役割」を先に明確にしておくと、
議論がぶれず、次のステップ(採用・教育・自動化)に一貫性が生まれます。

次に、守るべき役割を客観的に判断するための基準を設定します。

評価基準(0〜3点×4観点)
合計8点以上の職務は、採用・定着の重点対象として扱います。


- 売上への直結度
- 品質・安全への影響度

- 規制・免許など法的要件の有無
- 代替のしやすさ(代わりが効くか)

ステップ2|受け入れ準備を確認する(“出口”を先に塞ぐ)

採用を強化する前に、入社後の離職を防ぐ仕組みが整っているかを確認します。
ここでいう“受け入れ準備”とは、採用した人が無理なく定着できる環境を指します。

次の5項目で○×をつけ、○が3未満なら、まず定着と業務設計に重点を置きましょう。


- 入社1〜3か月の支援計画がある
- 柔軟な勤務(時短・シフト)に対応できる
- 育成担当・チームで育てる仕組みがある
- フィードバック・評価のタイミングが明確
- 辞退・離職理由を記録し、改善に反映している

ステップ3|三つの評価軸で優先度を判断する

第2部で扱った三つの視点を使って、課題の重さを点数化します。


- 影響度:欠員や遅延が売上・顧客満足にどの程度響くか
- 発生頻度:どのくらいの頻度で同じ問題が起きているか
- 回復にかかる時間:元に戻すまでにどれくらい時間がかかるか

1〜5点で評価し、合計点が高い課題から優先的に対応します。

リソース配分(検証と改善のサイクル)

リソース配分を決めたら、それを定期的に検証・見直しする仕組みを作ります。一度決めた配分を固定せず、「動き」と「成果」を見ながら調整することが大切です。


成果が出ている施策は、リソースを増やして拡張します。結果が出ていない施策は、前提条件や仮説を見直します。このサイクルを回すことで、リソース配分の最適化が進みます。

まとめ

人手不足倒産リスクは、これから建設業や介護業をはじめ、地方都市や交通アクセスの不便な地域の中小企業でも高まると予想されます。労働集約型産業だけでなく、製造・物流・サービスなど幅広い分野で、人材確保が経営課題の中心になる時代が来ています。

リスクを見つけたら、まずは原因を整理し、限られた人的リソース・時間・予算を、優先度に沿ってスピード感をもって実施します。そして結果を見ながら柔軟に配分を見直し、改善を積み重ねていきます。その繰り返しが、倒産リスクを未然に防ぎ、持続的に成長できる組織づくりへとつながります。

今回は、課題の発見から、優先順位の設定、そして改善のPDCAまでを一連の流れとして解説しました。

この記事が、みなさまの組織の最適化と、次の一手を考えるきっかけになれば幸いです。

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